まるでゴッドフェニックス! ロンドンとニューヨークを1時間で結ぶスペースプレーン | 未来塵

まるでゴッドフェニックス! ロンドンとニューヨークを1時間で結ぶスペースプレーン

リアクションエンジン社のスペースプレーン(Reaction Enginesより)

SFアニメ「ガッチャマン」に登場する「ゴッドフェニックス」をご存知ですか?

そう、あの科学忍法で「火の鳥」に変身して敵に突撃する(!)かっこいい飛行機です。

今回ご紹介したいのはイギリス「リアクションエンジン」という会社が開発中のスペースプレーンです。

ゴッドフェニックスになんとなく似ていませんか?

オリジナルスペースプレーン(Reaction Enginesより)
オリジナルスペースプレーン(Reaction Enginesより)

カラーリングを寄せてみたのでご覧ください。

ゴッドフェニックス風スペースプレーン-宇宙と地球
ゴッドフェニックス風スペースプレーン

なかなかいい感じでしょ?

SpaceX社の「スターシップ」など最近開発中の宇宙船はどれもレトロフューチャーを感じさせるデザインでお気に入りです。

レトロフューチャーなSpaceXの宇宙船(Starship)


さてこのスペースプレーンを開発しているリアクションエンジン社は1989年に設立されました。
この飛行機の特徴はそのデザインではなく、エンジンにあります。

リアクションエンジン社「SABER(Synergistic Air-Breathing Rocket Engine)エンジン」は、大気圏を飛ぶためのジェットエンジンと、宇宙空間を飛ぶためのロケットエンジンをそなえた革新的なハイブリッドエンジンです。

●SABREエンジン (wikiより)


つまりこのSABERエンジンを搭載した飛行機は地球と宇宙とを自由に往来できます。

まさにSF映画やアニメに登場する未来の飛行機、ますますガッチャマンのゴッドフェニックスみたいでしょ?

※ゴッドフェニックスが宇宙空間を飛んだのは第9話の1回だけですが・・・
●科学忍者隊ガッチャマン(Wikiより)

だからスペースプレーン(宇宙+飛行機)と呼ばれています。


スペースプレーンはロマンだけでなく経済的なメリットもあります

SABREエンジンは現在のロケットエンジンとジェットエンジンが抱える課題を解決するために設計されました。

宇宙船に搭載されるロケットエンジンは、その強大な推進力を得るために大量の燃料(液体酸素)を積み込む必要があります。その重量は宇宙船全体の70~75%にもなります。

だから一般的に宇宙に打ち上げられるロケットには巨大なブースターが付いていて、燃料を使い果たすたびに切り離していくのです。

切り離したブースターを回収して再利用することも簡単ではなく、あまり経済的とは言えません。


スペースプレーンは普通の航空機のように滑走路から飛び立ち、ジェットエンジンを使って上昇します。
空気が薄くなりジェットエンジンが使えなくなるとロケットエンジンに切り替え、宇宙空間を飛行します。目的地に近づくと再び下降してジェットエンジンを使い滑走路に着陸します。

スペースプレーンなら機体の再利用も可能です。

リアクションエンジン社は200回程度リサイクルできるスペースプレーン「スカイロン」を2004年に発表しました。

スカイロン(Reaction Enginesより)
スカイロン(Reaction Enginesより)

●スカイロン(wikiより)

このデザインもなかなかクールですね。


さてスカイロンやスペースプレーンに搭載予定のSABREエンジンは、地球の重力を振り切るために極超音速のマッハ5までジェットエンジンで加速し、宇宙空間に到達できるように設計されています。

ここに大きな課題がありました。

マッハ2以上の超音速で飛行する場合、機体前方の空気が強烈な圧力でつぶされ「断熱圧縮」という原理によって膨大な熱が発生します。
マッハ5のような極超音速になるとその熱は1000℃に達し、そのまま空気を吸い込むとエンジンがダメージを受けてしまいます。

この問題は極超音速のジェットエンジンを開発するエンジニアたちを長い間悩ませていました。

超音速で飛ぶ飛行機はいったん空気を音速以下に減速させたりして対処していますが、極超音速ではこのような方法では追いつきません。

SABREエンジンは液体ヘリウムを使ったプレクーラー(予冷却装置)で、わずか0.05秒の間に圧縮空気の温度を1000℃から-150℃まで冷却することを目標にしています。

SABREエンジン(Reaction Enginesより)
SABERエンジン(Reaction Enginesより)

プレクーラーのこれまでの実験では室温程度まで下げることでマッハ3.3の速度まで対応可能になりました。

プレクーラーが目標の性能を達成すれば、SABREエンジンは大気圏でマッハ5の速度を出すことができ、宇宙空間でロケットエンジンに点火すれば、なんとマッハ25という途方もないスピードを出すことができます。

リアクションエンジン社によれば、SABREエンジンを搭載したスペースプレーンは、平均7時間30分かかるロンドン→ニューヨーク間をなんと1時間で飛ぶことができるそうです。

まさに未来の飛行機と呼ぶにふさわしい性能です。


スペースプレーンが宇宙空間を飛行し、再び地球の大気圏に入ってくるときにはものすごい熱を帯びます。

空気摩擦の影響もありますが、その熱のほとんどはマッハ25というとんでもない速度で機体前方の空気が圧縮されて発生する「断熱膨張」によるものです。

※エアコンはこの「断熱膨張」を利用して、夏は熱い空気を一気に膨張させることで冷風を、冬は冷たい空気を圧縮させることで温風を発生させています。


スペースプレーンが地球に戻る瞬間を撮影できれば、さながら炎に包まれた「火の鳥」のように見えるでしょう。

スペースプレーン火の鳥バージョン
スペースプレーン「火の鳥」バージョン

科学忍法のリアル必殺技を目にする日はそう遠くないかもしれません。


References: REACTION ENGINES