世界初のパワードスーツとは? 産業用から軍事・医療・介護そしてポストヒューマンへ | 未来塵

世界初のパワードスーツとは? 産業用から軍事・医療・介護そしてポストヒューマンへ

GE社のハーディマン

「パワードスーツ」・・・そのネーミングや概念は1959年に発刊されたロバート・A・ハイラインのSF小説「宇宙の戦士」に初めて登場し、「機動戦士ガンダム」の人型機動兵器モビルスーツのモデルになったと言われている。

ただしモビルスーツのように人が乗り込んで操縦する搭乗型のロボットではなく、宇宙服のように装着して身体能力を増幅させたり、厚い装甲で身体を保護する強化防護服パワードスーツのイメージだ。

SFからはじまったアイデアだが、なんと1960年代にはすでにアメリカのGE(General Electric)社によって実用化が計画されていた。

それがこちらのハーディマンだ。

Hardiman_I-GE社より
ハーディマンの設計図(GE社より)

50年以上も前にしては、かなりクールなデザイン。

ハーディマンの元になったのは、第2次世界大戦後、原子力の発展にともない求められた放射性物質を遠隔操作で扱うための「移動式マニピュレータ」技術だ。

GE社はジャレド・インダストリーズ社に開発を依頼し、1961年に搭乗型のマシン「ビートル」の試作機が完成した。

Beetle-GE社
GEビートル(GE社より)

その後「人間にとって過酷な環境でも、機械の補助によって作業を可能にする」ことを目的として、ハーディマン・プロジェクトがスタートした。

その設計思想は「人間の反射制御を直接メカニズムに伝達することで、人間の動作の延長のような自然な反応を実現する」ことだった。

このハーディマンを設計したのはGE社のエンジニア、ラルフ・モッシャー博士だ。
実際にモッシャー博士ハーディマンのプロトタイプを装着した姿がこちら。

ラルフ・モッシャーのハーディマン-GE-Report
GE社より

昔のSF映画に登場する「〇〇〇サイエンティスト」感にあふれている。

当初のハーディマンは両腕合わせて680kgの物体を持ち上げられるほどのパワフルな設計だったが、当時の技術では人間の反応を上手くフィードバックすることができず、残念ながら実用化にはいたらなかった。

しかしハーディマンの技術はその後工場などで製品を組み立てる産業用のロボットに応用され、GE社では4500kgの荷重を持ち上げることのできるロボットアームが開発された。


パワードスーツはその後、産業用の他、軍事用、介護・医療用とさまざまな分野に発展していった。

例えば軍事用ではアメリカ特殊作戦軍(US SOCOM)が「TALOS(Tactical Assault Light Operator Suit)」という軍用パワードスーツ(強化外骨格)を開発している。

TALOSは兵士の筋力をアップさせるパワーアシストをはじめ、本部とリアルタイムで通信するデータリンク機能、暗視装置、衝撃を受けると硬化する液体を利用したリキッドアーマー、負傷した傷口を自動検出して泡でふさぐ止血システムなどのさまざまな能力をそなえている。

●TALOS (パワードスーツ)
wikiより

こちらの動画では激しい銃弾にさらされても全くダメージを受けていない、まさに映画「アイアンマン」さながらのシーンが描かれている。

USSOCOM – Tactical Assault Light Operator Suit (TALOS)
TALOS(USSOCOM.Youtubeより


日本も負けてはいない。

こんなスムーズな動きをするパワードスーツが2018年に発売された。

動作拡大型スーツ「スケルトニクス」
プロジェクト・スケルトニクス(スケルトニクス株式会社,Youtubeより)

動力によって搭乗者の身体能力をアップさせるのではなく、「三次元の閉リンク構造」という機械的な仕組みだけで手足の動作を1.5倍~2倍に拡大させることができ、まるで巨人に生まれ変わったような感覚が体験できるそうだ。


さらに医療・福祉分野では、1970年代に歩行動作を補うための下肢運動補助として開発がはじまった。

1996年に筑波大学の山海嘉之教授らによって開発されたロボットスーツ「HAL(Hybrid Assistive Limb)」は装着した身体障害者や高齢者の皮膚表面の生体電位信号を読み取り、身体機能を拡張・増幅・補助することのできるパワードスーツだ。

2004年には山海教授によってHALを製品化するための会社「CYBERDYNE(サーバーダイン)株式会社」が設立された。

Cyberdyne build robots and exoskeletons – BBC Click
CYBERDYNE,Youtubeより

全身装着タイプの HALは100kgのレッグプレスができる人間が装着すれば180kgの重量物を動かすことができ、数kgを持ち上げる感覚で40kgの重量物を持ち上げることができる。

当初はレンタルのみで販売されていいなかったが、2015年に厚生労働省の認可を受け、HALの国内販売が開始された。


今後パワードスーツはどのように発展していくのだろうか?

今まで紹介したパワードスーツは身体の外側に装着する外骨格型だった。

これに対し病気やケガで手足を失った人が義肢の進化形として装着する、脳や筋肉の神経と接続してコントロールできるロボット義肢タイプがある。

当初は皮膚に付けた電極でコントロールしていたが、神経に直接つなぐことで邪魔な周囲のノイズを排除でき、さらに義肢のセンサーが検知した情報を脳にフィードバックすることで、触れた感触を感じることもで可能だ。

これは脳と機械がつながったBMI(Brain-machine Interface)と呼ばれるテクノロジーだ。
脳波だけで械を操作したり、カメラで撮影した映像を視覚を介さず直接脳へ伝える技術が研究されている。

まさに人間と機械が融合した「サイボーグ」だ。

子供のころアニメの「銀河鉄道999」を見たときは機械の身体に抵抗を感じていたが、スマホやVR・ARがあたりまえの世代には、その抵抗感は少しずつ無くなっていくのかもしれない。

最近のAIの急激な進化によって人間の仕事が奪われたり、AIが人類の知能を超えるシンギュラリティの脅威が懸念されている。

われわれが機械と上手に共生していくためには、サイボーグ化して身体機能を拡張させたポストヒューマンへと生まれ変わることも、人類の新たな進化の方向性なのかもしれない。

ポストヒューマン

References: パワードスーツ(Wikipedia)