さまざまな計器やボタンが並ぶコックピット。
キャノピー越しに広がる視界。
操縦桿レバーを引くと、ロボットがゆっくり動き出す・・・。
●乗って動いて戦う!リアル搭乗型ロボット(クラタス) でも紹介しているが、ロボットに乗り込んで操縦することは、20世紀の少年たちの夢だった。
特に2足歩行。
やっぱりロボットはズシン、ズシンと重低音を響かせて2本足で歩くのがかっこいい。
だけど「ガンダム」みたいな大きさ(全高18m)は、現代のテクロジーではまだリアリティが薄い。
戦車並の「ボトムズ」(全高3.8m)
もっと大きくしても、戦闘機のようなキャノピーを付けて、「ダグラム」(全高9.63m)
ぐらいがしっくりくる。
21世紀になって20年近くになるのだから、そろそろそんなロボットが登場してもいい頃だろう。
そこで今回は2足歩行可能な搭乗型ロボットの2019年最新情報を紹介していく。
まずはロシアの「イゴレク」だ。
名称:イゴレク(Igorek)
製造:カラシニコフ(Kalashnikov)社
全高:約4m
重量:4.5トン
動力:不明
最大時速:不明
搭乗人員:1名
デビュー:2020年?
カラシニコフ自動小銃とも呼ばれる「AK-47」の製造元として有名な銃器メーカー「カラシニコフ社」が開発中の軍事ロボット。
「イゴレク」は2018年8月にモスクワで開催された軍事技術の展示会「Army-2018」で公開された。
2018年のモデルは動かない実物大のモックアップだが、全高約4mでコックピットは防弾ガラス性のキャノピー、操縦士が乗り込み、3本爪のアームでものをつかんだり2足歩行できる予定だ。
そのレトロフューチャーな「古き良き未来的デザイン」は、私は大好きなのだが、イギリスのBBCなどのメディアからは、映画「 ロボコップ」 に登場する「ED-209」
の劣化版だと茶化された。
●ロシアの最新ロボット(笑)、イゴレク
2018/8/23 BBCより
BBCによると、来年に開催される「Army-2020」で、イゴレクの改良版を展示したいとカラシニコフ社は考えているそうなので、期待したい。
次は、わが日本が誇る「ランドウォーカー」だ。
名称:ランドウォーカー(LAND WALKER)
製造:榊原機械
全高:3.4m
重量:1トン
動力:250ccガソリンエンジン
移動速度:1.5km/h
搭乗人員:1名
デビュー:2005年
環境設備や農業機械の開発を手がける群馬県の「榊原機械」が開発したロボットで、厳密には2足歩行ではなく、足底に内臓されたローラーをずらして進む「すり足歩行」だが、常にローラーが接地しているので前後左右に安定して移動することが可能。
「榊原機械」によれば、「ランドウォーカー」は実際に搭乗型ロボットに乗って楽しむエンターテイメント用として開発され、複数台で合成樹脂製のクッションボールを撃ち合って遊ぶ対戦ゲームなども想定している。
2005年当時で3600万円の価格を想定していたが、「榊原機械」の「ランドウォーカー」の紹介ページによると、現在はレンタルも可能なようだ。
最後は韓国の「メソッド-2」。
名称:メソッド-2(METHOD-2)
製造:韓国未来技術(Korea Future Technology)
全高:約4.2m
重量:1.6トン
動力:電気モーター
最大時速:1.6km/h
搭乗人員:1名
デビュー:2017年
革新的なロボット開発を目指している「韓国未来技術」というベンチャー企業が開発した メソッド-2 は、2017年に発表され、そのスタイリッシュなボディに衝撃を受けた。
それもそのはず、このロボットをデザインしたのは映画「トランスフォーマー4/ ロストエイジ」や「ゴースト・イン・ザ・シェル」などのメカデザイナー、ヴィタリー・ブルガロフというアーティストだ。
メソッド-2はデザインだけでなく操縦方法も斬新で、上半身は操縦者の動きをトレースして動作できる。
下半身はコンピュータ制御され、オートで2足歩行する(将来は操縦者によるペダルなどでの操作も検討中)。
メソッド-2を最初に見たとき、正直「やられた!(日本は追い越された)」と感じてしまった。
しかし・・・
昨年2018年10月23日に改良型のメソッド-3の動画がアップされていたので、
最新情報を知りたいと「韓国未来技術」のホームページ(http://www.k-technology.co.kr/)をクリックしたところ、接続できない。
いろいろ調べたら、韓国版wikipediaのnamu.wikiに驚くべき情報が掲載されていた。
メソッド-3の動画が公開されてからまもなく、「韓国未来技術」会長のヤン・ジンホ氏が暴行容疑で逮捕されたというのだ。
●「暴力動画」流出で身柄拘束、韓国を騒がす“パワハラ会長”ヤン・ジンホの黒い金と黒い夢
2018.11.10 WEZZYより
2018年10月30日、ヤン会長が元社員に暴行したという動画がニュースで流れた。
動画の中でヤン会長は男性を激しく殴打しており、しかもその映像はヤン会長が自ら命じて撮影されたものだという。
11月7日にヤン会長が逮捕され、「韓国未来技術」は現在閉鎖されている。
ヤン会長は「韓国未来技術」以外にも、ネット掲示板などを運営する「ウィーディスク」を運営しており、この掲示板の90%以上がアダルトなどの違法コンテンツで、そこで得た収益の100億円以上をメソッド-2の開発に注ぎ込んていたようだ。
確かに動画で公開されたメソッド-2のテクノロジーは一見すごいが、
2足歩行するたびにボディが 左右に大きく揺れ、常に天井から安全ケーブルでつながれている。
その技術は実際の現場で使える代物ではなく、まだまだショーレベルだ。
namu.wikiによると、メソッド-シリーズの開発は実質ヤン・ジンホ氏の意志と資金だけで維持されている可能性が高く、ヤン会長が逮捕された現在、プロジェクト自体が空中分解・・・少なくとも数年間は凍結されるようだ。
非常に残念な話だが、興味深い発見もあった。
メソッドのnamu.wikiでトヨタの「i-foot」が紹介されていた。
なんと2004年の時点で、すでに人を乗せて安定した2足歩行が実現しているではないか!
その後のトヨタのロボット開発に搭乗型ロボットは登場していないが、少なくとも2004年でこんなにスムーズな2足歩行ができるのだから、大いに将来性が期待できる。
さらに「i-foot」の特徴でもある「逆関節の鳥のような歩行形式」、これが2足歩行には最適だというのだ。
●まるで鳥…これが現時点での2足歩行ロボットの到達点(動画あり)
2017/10/15 WIREDより
アメリカのアジリティ・ロボティクスが開発した「キャッシー」という2足歩行ロボットは、上半身と腕が追加されて進化し、「ディジット」という名前で今年の2月に発表されている。
ところでこの鳥のような歩行といえば思いつくのが、「マクロス」に登場する「バルキリー」の第2形態(戦闘機とロボットの中間形態)「ガウウォーク」だ。
やはり日本のクリエイターの想像力は未来を先取りしている。
搭乗型2足歩行ロボットの元祖と言えば、マジンガーZやガンダムに代表される日本のアニメだ。
最初にボトムズやダグラムのような搭乗型2足歩行ロボットを作るのは、やっぱり日本であるべきだ。
日本のロボット技術の底力に期待したい。