○○○ウイーングッ!!
子供のころ、ス-パーヒ-ローの背中からニョキニョキ羽が生えたり、スーパーロボットの背中からギューンと左右に広がる翼を見て、「かっこいい!」と同時に「あんな大きな羽をどうやってしまっていたんだろう?」と考えたことはないだろうか?
でも、ついにあのシーンが再現できる日が来るかもしれない。
アメリカの名門校MIT(マサチューセッツ工科大学)とNASAは、同じ小さな部品をいくつも組み合わせて、フレキシブルに変形可能な飛行機の翼を開発した。
●MITとNASAのエンジニアが新しい種類の飛行機の翼を実演
2019年3月31日 MIT Newsより
一般的な飛行機の翼は「ジュラルミン」というアルミニウム合金でできており、軽くて丈夫だが、金属なので柔軟性はない。
だから離陸時・巡航時・着陸時などの飛行状態において、主翼に取り付けられたフラップ(補助翼)を可動させることでそれぞれのシーンに対応している。
しかしこの方法はあまり効率的とは言えない。
フラップを可動させるためにはモーターやケーブルが必要になり、それは飛行機にとっては重量を増加させるマイナスの要素になる。
理想はよけいな装置を取り付けることなく、離陸時・巡航時・着陸時、さらには速度によって柔軟に翼の形状を変化できれば、空気抵抗を少なくしてエネルギー効率を上げることができ、より速く、より遠くへ飛ぶことができる。
MITとNASAの開発チームはマッチ棒を三角に組んだような形の小さなユニットを無数に組み合わせることで、その素材が金属だろうと複合素材(カーボン)だろうと、翼全体、またはその一部をフレキシブルに変形可能にした。
しかも翼の中が空洞なのでとても軽く、構造的にも丈夫だ。
「この翼がどのようにできているか?」、「どのように組み立てられるのか?」は下記の写真を見ればイメージしやすい。
写真では大学院生が手作業で組み立てているが、将来的には小型のロボットによって組み立てがオートメーション化され、すばやく低コストで製造可能になる予定だ。
以前は小さなユニットを1つ作るのに数分かかっていたが、新しいシステムを開発し、複雑な3D金型でポリエチレン樹脂を射出成形することで、1つのユニットの製造時間をわずか17秒に短縮した。
組み合わされたユニットは飛行状況に合わせて受動的に変化する。
例えば飛行中の空気抵抗を減らすように翼がさまざまな迎角をとることができれば、より効率的な飛行が可能になり燃費を伸ばすことができる。
実際にNASAで風洞テストが行われ、その実用性が検証された。
ポイントは柔軟性と剛性を兼ね備えたユニットの支柱の設計で、これを特定の応力に対応して曲がるように作られている。
開発チームは数年前にドローンサイズ(約1メートル)の翼を開発したが、今回発表されたのは1人乗り飛行機の翼に相当するサイズ(約5メートル)だ。
翼を構成するユニットそれぞれつは1m3あたり5.6kgの密度しかなく、同じ剛性のゴムと比較すると約1000分の1以下に軽量化されている。
世の中のほんとんどの飛行機は長い胴体に翼がついた一様な形をしているが、本当に効率的な形は翼と胴体が一体となった1枚翼の全翼機だ。
その代表はアメリカ空軍のB-2ステルス戦略爆撃機だ。
未来では下記のようなロボットによって1枚翼の全翼機が次々と組み立てられていくかもしれない。
開発チームによれば、今回の「新しい翼構造」は飛行機の翼以外にも応用できる大きな可能性を秘めており、例えば、小さく折りたたんだり広げたりが必要な人工衛星や宇宙船のアンテナに利用できるそうだ。
いやいやそんな現実的なものばかりでなく、冒頭で紹介したような自由に格納したり広げたりできるロボットの翼や、アイアンマンスーツのようにパラパラと展開して身体を包みこむアーマーのような夢の技術にも期待したい。
References:MIT News