地球には北極から出て南極へ入る磁力線が走っており、この磁力線によって作られる磁気圏は宇宙からの有害な放射線や太陽風から地球を保護している。
北半球や南半球の高緯度で見られる美しいオーロラは、この地球の磁場が原因だ。
コンパスを使って地球の磁極を知ろうとしたとき、あなたが北半球にいるのならコンパスの針は南の磁極を指し、南半球にいるのなら北の磁極を指している。
※ちなみに地球の自転軸上の北極点とコンパスが示す北極である北磁極は異なり、約1000km離れている。
さて、実はこの磁極は固定されておらず、地球の表面を少しずつ移動している。
2019年2月に海洋大気庁(NOAA)国立環境情報センターから発表された最新のデータでは、北極圏にある北磁極はカナダからロシアの方向へ移動している。
しかも1990年代以降には年間に15kmだったその移動速度が、55kmにスピードアップしている。
このまま磁極の移動速度が加速していくと、磁極の急激な変化によって前世紀に恐れられいたような「ポールシフト」が起こるのだろうか?
グラハム・ハンコック氏は20世紀末にベストセラーとなった「神々の指紋」の中で、北極と南極が瞬間的に入れ替わるポールシフトによって過去に存在した超古代文明が滅亡したと主張している。
確かに急激に磁極が変化すれば気候変動や地殻変動が引き起こされ、壊滅的な被害が発生することが予測される。
ポールシフトによって、われわれ人類が滅びるような大惨事は起こるのだろうか?
NASAによればその答えは「NO」だ。
地球の歴史を振り返ってみると、化石記録からこのような磁極反転が過去8,300万年のうち183回起こっている。最後に大きく反転したのは約78万年前だった。
深い海の底から採取された堆積物を調べると、磁気極性の変化がわかる。
これらの岩石をサンプリングして放射年代測定法にかけて地球の磁場の歴史を調べると、地球の磁場は何度も強まったり弱まったり、さらに極性が変わっていたことが判明した。
さらに化石記録との相関を調べたところ、磁気極性変化と植物や動物の生活に劇的な変化は見られなかった。
それでは磁気極性の変化がわれわれの生活にどのうような影響を与えるのだろうか?
NASAや連邦航空局などの政府機関は、日常業務において磁極の精度に依存している。
極の位置、特に磁北は、GPSシステムを使用している人やスマートフォンのコンパスにとっても重要だ。
また磁場が弱くなれば、より多くの宇宙放射線が地球の表面に到達し、遺伝子が突然変異する可能性も増加する。
ただし磁極の移動や逆転が実際に地球上の生命に深刻な影響を与えるかについて、専門家の意見では心配する必要はなさそうだ。
磁極反転は、地質学的な時間のスケールから見て、千年にわたって徐々に起こる一般的な出来事だからだ。
Reference:NASA,ポールシフトwiki,LIVE SCIENCE,Evolving Science