UFO特番で見た「母船」にそっくりのオウムアムア
子供のころ、矢追純一氏のUFO特番で、
ナチスが密かに円盤型の航空機「UFO」を開発しており、大型の葉巻型母船を開発して、火星に向けて飛び立った…。
そんなテレビ番組を見て、胸を躍らせていた私。
あのときの忘れかけていた興奮を、ひさびさに思い出す事件が4年前に起きた。
2017年10月、ハワイの望遠鏡が太陽系の外からやってきた謎の天体をとらえたのだ。
その天体は発見されたハワイにちなみ、土地の言葉で「遠方からの最初の使者」を意味する「オウムアムア」と名付けられた。
私が最初に驚いたのは、NASAが発表したその姿だった。
長さが幅の10倍以上もある極端な楕円形で、昔見たUFOの母船「葉巻型UFO」そのものだった。
発見された当初はさらに、太陽系外の文明が創造した宇宙船のような、他の天体とは異なる特徴が次々と報告された。
●太陽系外の軌道から侵入し、地球に接近して遠ざかっていった。
※偵察機のよう。
●太陽の重力で軌道を変えて飛び去った。そのとき太陽の重力だけでは説明がつかないほど加速した。
●彗星などでこのような加速が見られるが、オウムアムアには、彗星の特徴である塵やガスの尾が見られない。
●天体の表面が赤みがかっており、太陽の光をよく反射する。
※オウムアムアの表面は、小惑星によくある氷や水素ではなく、有機物や金属、あるいは輝石と呼ばれる鉱物で覆われているかのもしれない。
●この天体は約8時間ごとに明るさが10倍も変化する。
※細長い形で周期的に回転している。
【参考】太陽系に飛来した天体オウムアムア、極端な楕円形
2017/11/22 National Geographicより
この変化する周期から考えると、この天体の長さは400m、幅40mほどと考えられ、主に球形をしている他の天体とはまったく異なる、非常に珍しい形をしている。
しかし残念なことに、発見されたときにはすでに時速約15万kmで地球から遠ざかっていた。
すでにわれわれの手の届かないところにいる。
天文学者たちが「オウムアムアUFO説」を否定
さらに2019年7月、欧米の天文学者の研究チームが、分析の結果「オウムアムアはごく自然な天体だ」というUFO説を完全に否定する論文を発表した。
●The natural history of Oumuamua(オウムアムアは自然な天体)
nature astronomyより
研究チームによれば「オウムアムアの赤みがかった色や岩石などの成分が自然の小惑星と似ており、謎の加速についてもその速度は小さく少量のガスで十分。地球から噴出を観測できなかったとしても不自然ではない」というのだ。
この発表をから意気消沈していたが、最近アメリカの名門校、ハーバード大学の物理学者が「やはりオウムアムアはUFOだった」という主張をまとめた著書を出し、「オウムアムア=UFO説」が再燃している。
ハーバード大学の博士が「オウムアムアUFO説」を主張!
本を出版したのは以前から「オウムアムア宇宙船説」を強く主張しているハーバード大学の物理学教授アビ・ローブ博士だ。
Extraterrestrial: The First Sign of Intelligent Life Beyond Earth
(地球外:宇宙彼方の知的生命の最初のサイン)
ローブ博士はハーバード大学天文学部門の議長を9年間務めている一流の物理学者だ。
ローブ博士は著書の中で、オウムアムアの明るさが約8時間ごとに10倍も変化する仮説として、オウムアムアが実は葉巻型ではなく、パンケーキのように薄く平らな形で飛んでいくとき、このうような観測結果が得られると説明する。
さらにオウムアムアがこの形状をしている理由として、例えばボートの帆が風に押されて進むように、太陽光を反射して宇宙船が進む仕組みを提示している。
これは実際に宇宙探査用のライトセイル技術で応用されており、この推進システムでは宇宙船が燃料を運ぶ必要がないという。
つまりオウムアムアは円盤のような形をしているかもしれないのだ。
これはまさしく、われわれが映画などでよく目にするUFOの形だ!
すでに手遅れ
だが、オウムアウアはすでに太陽系をあとにして深宇宙へと向かいつつあり、地球上からは観測すら難しいところまで遠ざかってしまった。
つまり、宇宙船で追いかける以外にオウムアムアの謎を解き明かす方法はない、ということになる。
でもオウムアムアに追いつけるような宇宙船を人類はまだ持っていない。
しかしまだ希望は残されている。
オウムアムア探査プロジェクトに期待!
それがイギリスのNPO「 I4IS(Initiative for Interstellar Studies)」が計画している「プロジェクト・ライラ」だ。
I4ISはオウムアムアの発見からわずか2週間後に、この天体を追跡する計画を発表した。
I4ISによるオウムアムア探査計画は次の通りだ。
オウムアムアに追いつくには、まず世界最大規模のロケット(スペースX社のファルコン・ヘビーなど)で追跡機を打ち上げる。
そして木星と太陽の重力を利用し、スリングショット(パチンコ)で弾を飛ばす要領で、遠ざかる未知の天体に向かって追跡機を放り投げるのだ。
プロジェクト・ライラは、2030年に追跡機の打ち上げを提案している。
追跡機がオウムアムアに追いつくのは2049年ごろになる見通しだ。この時点で、謎の天体は太陽から冥王星までの距離の5倍よりさらに遠いところにいる。
ちなみにこのミッションはいつでも始められるわけではない。
既存のテクノロジーだけで実現するために、木星が特定の位置にあるときに打ち上げる必要がある。
木星の公転周期は約12年なので、次の機会は木星が再び同じ位置になるまで12年間待たなければならない。
他にも「広大な宇宙のどこかを漂っているはずのオウムアムアをどうやって見つけるのか?」など課題は残っているが、2049年「プロジェクト・ライラのオウムアムア到達成功」に期待したい!